本業の知識でショート動画を作っていい?守秘義務に触れない題材の選び方
本業の経験や知識をショート動画にしたいとき、どこまで話してよいのか。社内情報・取引先・競業の3つの観点で、安全な題材の決め方を解説します。
本業の知識は、ショート動画の強い題材になります。ただし、同じ業界の知識でも「一般に知られている知識」と「会社の中で得た情報」を分けて考えないと、守秘義務や競業のトラブルにつながるおそれがあります。結論としては、仕事の経験から得た「考え方」や「公開情報で説明できる内容」を題材にし、社内資料・数字・取引先・未発表の情報は使わないのが基本です。
具体的な可否は、会社の就業規則や契約書、業界の規制によって変わります。この記事は考え方の整理であり、法的な判断ではありません。迷う題材は、人事や法務、必要なら専門家に確認してください。
守秘義務で気をつける情報の種類
守秘義務の対象は、「会社が秘密として扱っている情報」です。具体的には、顧客リストや取引先名、見積もりや原価、未発表の商品やキャンペーン、社内のシステムや手順、個人情報などが典型です。契約書や秘密保持の誓約書に書かれていることもあり、退職後も続く場合があります。
迷いやすいのは、「自分が工夫した方法」です。個人の工夫のつもりでも、会社の業務のなかで作った手順やテンプレートは、会社の情報とみなされる可能性があります。社内で作った資料の画面を映す、そのまま読み上げる、といった使い方は避けましょう。
- 顧客名・取引先名・案件の内容
- 価格、原価、利益率、社内の数字
- 未発表の製品・サービス・人事・組織の話
- 社内資料やシステム画面、メールの引用
- 同僚や上司の実名・特定できるエピソード
「安全な題材」を作る三つのフィルター
題材を決めるときは、三つのフィルターを通すと安全性が上がります。ひとつめは「公開情報か」で、公式サイト、プレスリリース、書籍、法令など、誰でも確認できる情報で説明できる内容かを見ます。ふたつめは「抽象化できるか」で、特定の会社や案件を離れても成り立つ一般論にできるかを確認します。みっつめは「特定されないか」で、社名・部署・時期・口調から、勤務先が推測されないかを見ます。
例えば営業職なら、「失注した商談」の実例を話すのは避け、「初回面談で最初に聞く質問の考え方」のように、手法を一般化した内容にします。経理職なら、自社の決算数字ではなく、「領収書の保管でよくある勘違い」のような一般的な知識に絞ります。
競業にならないようにする:本業と同じ市場で発信するとき
本業と同じ業界・同じ顧客層を対象にした発信は、会社の利益と衝突しやすい領域です。競業避止の規定がある会社では、自分の発信が、会社のサービスと競合する商品の紹介や集客につながっていないかを確認します。
特に、本業の顧客に向けて自分のサービスや外部サービスを案内する形になると、問題になりやすくなります。そうした可能性があるなら、題材を本業の「隣」の領域に少しずらす方法もあります。たとえば、IT企業の営業職なら、製品の話ではなく「職種に関係なく使える仕事術」にするといった具合です。
競業避止の範囲は会社や契約によって異なります。同業種での発信を考える場合は、事前に会社へ確認してください。
題材の具体例と、台本の書き方
安全な題材の例として、資格の勉強法、業界の一般的な用語の解説、仕事道具の選び方、新人時代の失敗から学んだ考え方、法令や公的機関の資料にもとづく基礎知識などが挙げられます。いずれも「社内の情報を使わずに、自分の言葉で説明できる」ことが共通点です。
台本は「結論、理由、小さな例」の順に組むと、守秘に触れにくくなります。例として次のような流れがあります。
- 冒頭(2〜3秒):「新人のうちに知っておくと楽になる、報連相の順番です」
- 理由(10秒):「先に結論を伝えると、相手の判断が早くなるからです」
- 例(10秒):「たとえば、『遅れそうです』より『30分遅れそうです。理由は〜』のほうが動きやすい」
- 締め(3秒):「明日から一言だけ、結論を先に」
実際に使える「抽象化」の書き換え例
抽象化とは、具体的な案件を、一般的な考え方に置き換える作業です。これができると、題材の幅が広がり、守秘義務の心配も減ります。例えば、「A社との商談で値引きを求められたとき、こう切り返した」は、特定の取引先が出てくるため不適切です。これを、「値引きを求められたときに、先に確認する3つのこと」に書き換えれば、一般に通用する知識になります。
書き換えの手順は単純です。まず、固有名詞、数字、時期を取り除きます。次に、「誰にでも当てはまる状況」に言い換えます。最後に、「やり方」ではなく「考え方」に焦点を移します。こうすることで、同じ経験から、会社に迷惑をかけない題材をいくつも作ることができます。
書き換えたあとに「この内容は、会社を知らない人が聞いても成立するか」を問いかけてみてください。社内の人にしか通じない話は、守秘の観点でも、視聴者への分かりやすさの観点でも、見直しが必要なサインです。
公開前の最終チェックリスト
投稿前に、次の項目をひとつずつ確認します。特に、背景に映るものと音声は見落としがちです。机の上の書類、パソコンの画面、社員証、制服、社用スマホなどが映り込んでいないかを、動画を止めて確認してください。
それでも不安が残る題材は、公開を見送ります。ショート動画は次の企画を何本でも作れます。一本の題材にこだわって本業との関係が悪くなるリスクを取る必要はありません。
- 社名・取引先・案件の特定につながる情報はないか
- 数字や図が社内資料由来でないか
- 背景に社員証・書類・画面が映っていないか
- 会社の規程や上長への確認が必要な内容ではないか
- 同僚が見て自分の話だと分かる描写がないか
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