導入事例をショート動画にするには。顧客の許諾の取り方と伝え方の型
導入事例は信頼を得やすい一方、顧客企業の許諾と事実の正確さが欠かせません。許諾の取り方、動画の構成、数字の扱い方を、トラブルを避ける観点で整理します。
導入事例をショート動画にするときは、顧客企業の許諾を文書で得ること、事実と数字を顧客に確認してもらうこと、顧客の課題を主役にすることの三つが基本です。許諾なしの掲載は、信頼関係を壊すだけでなく、秘密保持契約や権利の問題に発展するおそれがあります。
導入事例は、検討中の見込み客に『自社にも当てはまりそうだ』と感じてもらえる強いコンテンツです。誠実に作れば、営業の場面でも長く使えます。
許諾を取る手順
許諾は、動画企画の初期段階で相談します。完成後に確認すると、修正が大きくなります。まず契約上の秘密保持の条項を確認し、事例の掲載が許されるかを調べます。そのうえで、顧客の担当者に趣旨と利用範囲を説明し、顧客内の広報・法務の承認が必要かを聞きます。担当者の個人的な了承だけでは、組織として許諾されたとは限りません。
- 掲載の目的と媒体(SNS、サイト、営業資料など)
- 掲載期間と、取り下げの依頼を受けたときの対応
- 表示する社名・ロゴ・担当者名・役職の範囲
- 数字や発言内容の確認と、修正の権利
- 顧客側の撮影場所や映り込みの確認
- 書面(メール可の場合も記録を残す)での許諾記録
顧客の発言と数字をどう扱うか
顧客の発言は、本人の言葉を尊重し、意味が変わるような編集をしないことが大切です。短く編集する場合も、前後の文脈を切って印象を変えてしまわないよう、顧客に完成版を確認してもらいます。
導入効果の数字は、算出の条件(期間、対象範囲、他の施策の影響など)を確認し、顧客の了承を得た表現で使います。『この導入で必ず同じ結果になる』と読める表現は避け、『この会社ではこうだった』という事実の紹介にとどめます。
効果の断定的な表現は、見込み客に誤解を与え、景品表示法の観点でも問題になり得ます。数字を使うときは、根拠資料を保管し、法務の確認を受けてください。
30秒で伝える事例の構成
主役は顧客です。自社の機能説明は最小限にして、顧客の言葉と場面で語ります。長い事例は、複数の動画に分けて、1本ごとに一つの論点にします。
- 冒頭:顧客が抱えていた課題を一言で(例:「月末の集計に毎回丸二日かかっていた」)
- 背景:その課題がなぜ起きていたか
- 選択:なぜこの方法を選んだか、決め手は何か
- 変化:導入後に変わった場面を、具体的な様子で
- 一言:顧客から見込み客へのメッセージ(許諾を得た発言)
顔出しができない顧客の場合
顧客が顔出しや社名の公開を望まないことは珍しくありません。その場合は、社名を伏せて業種と規模感だけを示す、声だけの出演、文章での引用、手元の映像、担当者の後ろ姿などの選択肢があります。社名を伏せた事例でも、特定できる情報が残っていないか注意します。
匿名化した事例は、見込み客から『本当の事例か』と疑われることもあります。事実に基づく内容であることを、顧客の了承の範囲で説明できるようにしておきます。
事例動画の失敗パターン
とくに、事例は時間が経つと実態とずれていきます。半年から1年ごとに、掲載内容が今も正しいかを確認し、古くなったものは取り下げるか更新してください。顧客の状況が変わった場合の取り下げ依頼にも、迅速に応じられる体制を整えます。
- 許諾が口頭だけで、公開後に顧客内部から指摘を受ける
- 自社の宣伝に寄りすぎて、顧客の課題が見えない
- 効果の数字が大きく見える部分だけを切り出している
- 顧客の担当者を前面に出しすぎて、本人に負担がかかる
- 古い事例を更新せず、現在の製品・条件と食い違っている
事例の探し方と、依頼のしかた
事例化の依頼は、導入後に成果を実感し、担当者との関係が良好な顧客から始めます。営業やカスタマーサポートに、『最近喜んでもらえた顧客』を教えてもらうのが近道です。依頼のときは、手間をかけさせない形を心がけます。質問は事前に共有し、撮影時間は短く、完成物は事前に確認してもらいます。
顧客にとっての利点も伝えます。自社の取り組みを紹介してもらえる機会になること、採用や取引先への発信にもなることなどです。ただし、お礼として金品を渡す場合は、広告表記や贈答に関する社内ルールや法令に照らして、慎重に扱ってください。
許諾の依頼メールで伝えるべき内容
依頼のメールでは、目的、掲載媒体、掲載期間、確認の手順、取り下げの方法を、箇条書きで簡潔に書きます。相手の負担を最小にするため、返信が『了承します』の一言で済むよう、確認事項を整理しておきます。書面や記録が残る形で許諾を得て、保管場所を共有しておいてください。
事例を営業とつなげる
完成した事例動画は、SNSに公開するだけでなく、営業資料やメールで商談前後に共有できます。営業担当者に、どの場面でどの事例を紹介するとよいかを伝えておくと、活用の幅が広がります。見込み客の反応を営業から聞き、次の事例の企画に反映する循環を作ってください。