社員をショート動画に出演させるときの同意と配慮。肖像・退職後・SNS公開の扱い
社員の出演は親近感を生みますが、同意や退職後の扱い、本人の負担への配慮が欠かせません。企業がトラブルを避けるために決めておくべき項目を整理します。
社員をショート動画に出演させるときは、出演の意思を本人が自由に選べること、利用範囲と期間を事前に説明すること、同意を書面で残すこと、の三つが基本です。立場の弱い社員に「みんな出ているから」と出演を促す雰囲気は、避けなければなりません。
この記事は、一般的な運用上の注意をまとめたものです。契約や肖像権の扱いについて個別の判断が必要な場合は、法務担当や弁護士に確認してください。
出演を「強制しない」ための具体的な配慮
出演は業務命令として扱うのか、任意なのかを明確にします。任意とする場合は、断っても評価や人事に影響しないことを明言します。業務として依頼する場合でも、本人の事情(顔を出したくない理由、家族への配慮、過去の経験など)を聞き、無理強いしないことが重要です。
断りにくい雰囲気を避けるため、上司からの直接の依頼ではなく、広報や人事など中立の立場から、書面やメールで依頼する方法もあります。声だけの出演、手元だけの出演、後ろ姿など、顔を出さずに参加できる選択肢を用意すると、協力しやすくなります。
説明して同意を取るべき項目
これらを説明し、本人が理解したことを確認してから、署名またはそれに準ずる記録で同意を残します。口頭だけの同意は、後で内容を確認できなくなるので避けます。
- 動画の目的と、公開するプラットフォーム
- 公開の期間と、取り下げの方法(本人が取り下げを希望した場合の連絡先)
- 表示される情報:氏名、所属、役職、声、顔、年齢などの範囲
- 二次利用の範囲:広告、採用サイト、社内資料、他媒体への転載
- 退職した場合の扱い:公開を続けるか、取り下げるか
- コメントやDMで嫌な思いをしたときの相談窓口と会社の対応
退職後・異動後の動画をどうするか
社員が退職した後も、動画が公開され続けることに抵抗を感じる人はいます。同意の段階で、退職後の扱いを決めておくのが理想です。選択肢としては、退職時に取り下げる、本人が希望した場合のみ取り下げる、一定期間後に整理する、などがあります。
実際に取り下げの希望があった場合は、速やかに対応する体制を整えます。動画の本数が増えるほど、どの動画に誰が出ているかの管理が複雑になるため、出演者と動画の対応表を作り、更新しておいてください。
本人を守る:コメント対策と相談窓口
出演者は、容姿や発言に対する心ない反応を受ける可能性があります。公開前に、コメント欄の運用方針を決めておき、誹謗中傷は非表示・報告・ブロックなどで対応することを伝えます。
加えて、出演者が相談できる窓口を設け、嫌な思いをしたときにすぐ会社が動くことを約束します。『出てよかった』と社員が感じられる運営でなければ、長期的には出演者の確保も難しくなります。
未成年者やアルバイト、委託先スタッフの出演には、別途の配慮や保護者の同意が必要な場合があります。個別の事情は専門家に相談してください。
同意書に入れる文言の考え方
同意書には、前述の説明項目に対応する欄を設け、本人が内容を確認したうえで署名できる形にします。文面は専門的になりすぎないようにし、「何に、どこで、いつまで使われるか」が読めば分かるようにします。弁護士や法務のひな形を使い、会社の状況に合わせて調整するのが安全です。
同意内容を変更する場合(新しい媒体で使いたい、期間を延長したいなど)は、改めて本人に説明し、同意を取り直します。最初の同意を拡大解釈して使うことは、トラブルの原因になります。
顧客・取引先が映り込むとき
店舗や展示会、取引先の現場での撮影では、社員だけでなく、顧客や取引先の人が映り込みます。顔が判別できる形で映る場合は、本人の同意が必要です。撮影中であることを入口に掲示するだけで同意とみなすのは、リスクがあります。
映り込みを避ける撮影の工夫として、撮影時間を営業時間外にする、撮影エリアを区切る、背景をぼかすなどがあります。取引先の社名や商品が映る場合は、その会社の許可も確認してください。
出演してくれた社員への感謝と還元
出演は通常業務に加えての負担になることがあります。業務時間内での撮影、評価での配慮、社内での感謝の共有など、出演者が報われる仕組みを用意しておくと、次の出演者も協力しやすくなります。金銭的な報酬や手当を設ける場合は、人事・労務の制度に沿って設計してください。
撮影現場での実務的な注意点
撮影のとき、本人が不安そうに見えたら、いつでも中断できることを伝えます。撮影した素材の確認は、本人にも見てもらい、不本意な場面があれば使わないと約束します。公開前に、本人が最終版を確認する時間も確保してください。
また、撮影場所の背景、画面、書類に、他の社員や顧客の情報が映り込んでいないかを確認します。出演者以外の人が映る場合は、その人の同意も必要です。